ロングセラーの原付「タクト」とは

1980年代のスクーターブームを作った車種

日本においてスクーターというジャンルのバイクが登場しはじめたのは、1980年台に入ったあたりのことです。
それまではバイクというとスーパーカブのような業務用のイメージが強く、当時の道路交通法では250cc以上の大型バイクに乗るためには「限定解除」という非常に難しい実技試験が必要であったこともありどうしても「男の乗り物」と思われていました。

しかし1970年代中頃あたりから「ファミリーバイク」という見た目からしてカジュアルなタイプのバイクが登場してきたこともあり、少しずつ女性の日常の足として使用される機会も増えてきました。

そんな一般向けの小型バイクが爆発的にブームになったのが1980年代ころから始まったスクータブームで、以降50ccクラスのATスクーターが数多く市場に投入されていきました。

そのブームの先駆けとなったのがホンダの「タクト」で、発売当時はまだ「スクーター」という名称がなかったので狭義には異なるのですがそれでもスクータータイプのバイクの原型としての重要な役割をしました。

1980年4月発売のタクトは今写真を見てもいかにも昭和の薫りのするスタイリングをしていたものですが、のちに「ディオ」などのスタイリッシュな流線型デザインが採用されるようになったことをきっかけに、1983年には大きくデザインを変更します。

実は道路交通法では1986年まで原付バイクはヘルメットをかぶることは義務ではなかったのですが、法律が改正されたことによりヘルメットの収納スペースが原付バイクにも求められるようになりました。

そこでタクトではいち早くメットインスペースをシート下に導入し、その利便性から一気に多くのユーザーを獲得しました。

2015年1月のモデルチェンジでは原点回帰

ホンダの小型バイクの中でもタクトは長い歴史を持つロングセラー商品です。
これまで何度も流行に合わせたモデルチェンジをしてきたタクトですが、2015年1月のモデルチェンジでは大幅に性能向上とデザインの変更をしています。

特徴的なのが車体のデザインを発売当初にかなり近づけた造形に戻しているということです。
ある意味タクトらしさを取り戻したと言ってもよいもので、燃費性能のよさや力強い機動力など機能性を重視したスクターとして新しい時代のニーズに即した商品になっています。

ここ数年のバイク市場においては原付2種がブームになっていますが、タクトシリーズではあえて50ccにモデル限定させており、発売当初からのファミリーバイクとしての役割をしっかりと踏襲しています。

広いメットインやカバンをかけられる大型フック、荷物を積めるリアキャリアといったように日常使いのための工夫も満載です。